業界特集
株式会社伊藤製作所(三重県四日市市)
掲載企業株式会社伊藤製作所
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主要3品目
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順送り金型設計
順送り金型製作
順送りプレス加工 / 冷間鍛
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従業員数
135人
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年間売上高
- 62億円
「零戦を製造していた創業者が、アメリカの爆撃機B29の部品が金型で作られていることに気付き、敗戦を確信したそうです。そこから金型への憧れが始まりました」――株式会社伊藤製作所の代表取締役社長伊藤竜平氏は語った。同社は創業時、漁網機械を取り扱っていたが、創業者の金型への思いから、1964年から順送りプレス金型の製造を開始する。順送り金型は従来の単発金型に比べ位置決めの精度なども厳しく、当時は扱っている中小企業は少なかったという。以降は、順送りプレス金型のリーディングカンパニーとして業界をけん引してきたのだ。現在では精度が2~3ミクロンという極めて高精度な金型を製造している。部品注文に対応するため日本国内での型売りは減少傾向にあるが、売り型は自社の技術を鍛え、新しい知見を得るためにも継続していきたい考えだ。
「当社はモータリーゼーションの発展とともに成長してきた会社です」と伊藤氏が語るように、主力は自動車部品だ。現在はEV自動車への転換期ではあるが、ハイブリッド車で培った高圧部品はEV車でも大きくは変わらない。それ以上に、自動運転や先進安全自動車(ASV)技術の向上によりセンサやカメラが多く使われるようになったことで、車載電子部品のニーズが大幅に増加している。新しい部品が増え、その精度や清浄度の要求が上がっており、守備範囲が広がっているという。同社では研究開発段階からメーカーの困りごとに寄り添うことで、設計・開発担当者の信頼を勝ち得ている。それも高い技術力と安定した品質で自動車産業を支えてきたことの表れだ。
同社は、プレス部品製造の「客先不良ゼロ」を掲げている。見えない部分、見えづらいところはセンサやカメラ、CAEを活用して見える化。さらに課題であった機械の「チョコ停」を監視するため、独自のシステムを自社開発した。問題の多い金型では72%もトラブルが減るなど、品質向上の効果を上げており、今後は運用面などをブラッシュアップしつつ海外工場でも展開していく予定だ。
同社にはフィリピン、インドネシアに海外拠点を持っており、海外への進出当初は家電が多かったが、現在は自動車部品の部品製造や型売りを行っている。海外工場は順調に売り上げを伸ばしており、2023年11月には手狭になっていたインドネシア工場を移転。再スタートを切っている。インドネシアは人口も多く自動車の需要増も見込める。「成長している国の活気を感じる」と伊藤氏は話す。
自動車産業は新たなステージに入っている。伊藤製作所はこれからも自動車をその技術力で支えていく。