業界特集
黒田精工株式会社
代表取締役社長 黒田 浩史 氏
掲載企業黒田精工株式会社
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主要3品目
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ボールねじ
工作機械
精密金型
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従業員数
988 人(連結、パート・嘱託含む)
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年間売上高
- 18,504 百万円(2024 年 3 月期/連結)
黒田精工の電気自動車(EV)用高効率モーターコアの事業が好調だ。需要の急拡大に応えるマザー工場として、同社長野工場(長野県北安曇郡池田町)に新たに建設していた第8工場も2023年末に竣工。300トン大型高速プレスと、同社独自技術「MAGPREXⓇ」用ラインを設置。黒田精工と業務提携するEURO(ユーロ)グループを中心とした欧米、中国、韓国のグローバルパートナーと協調しながらモーターコア生産体制のさらなる拡充を図る。 モーターコア生産が好調なこともあり、金型部門は成長局面にある。成長のアクセルは「海外市場」かつ「EV」だ。
世界中のモーターコアを知っている
黒田精工は1925 年に、ゲージ専業メーカーとして創業。以来、精密金型製作のための平面研削盤、精密プレス、ボールねじ、精密測定器など多岐にわたる製品を開発する。現在、事業部は、ボールねじなどを扱う「駆動システム」、精密プレス関連の「金型システム」、工作機械や要素機器などを開発する「機工・計測システム」の3つ。同社の金型製造においては自社製の研削盤を用いる。さらにその研削盤には自社製のボールねじを使用する。このように事業部間のシナジーで仕事が成り立っていることも特色だ。
金型事業部については、全売り上げの85%が海外市場向けだ。「つい2年前までの当社の主力は駆動システム事業部のボールねじ。それが大きく変わり、今は金型システム事業のモーターコア関連の売り上げが最大です」と同社代表取締役社長の黒田浩史氏はビジネスの近況を語る。
モーターコアの量産プロジェクトは現在、グローバルで36件進行している。モーターコア生産における主要技術の1つが同社独自の「Glue FASTECⓇ」である。薄板の積層固着に接着剤を採用することで薄板間の絶縁を保ちつつ金型内での自動積層を実現する。この工程によってモーターコアの鉄損を大幅に減少できる。グローバルパートナーにはGlueFASTECⓇなど同社技術をライセンシングしている。
黒田精工のモーターコア製造は自社向けではなく、パートナー企業からの依頼を前提に製作していることが特色である。「当社の技術者は、世界で一番、モーターコアの図面を多く見ていると思う」と同社の金型事業を率いる専務取締役で金型事業部長の石井克則氏は言う。
安曇野で憧れの企業、元気の秘訣
黒田精工は優秀な若手技術者が多く活躍する、安曇野でも学生に人気のある企業だ。「名だたるクルマに積まれる部品を作る」企業としての知名度が着々と高まってきたからではないかと黒田氏は言う。また、安曇野という土地への愛を持つ社員も多い。女性の技術者やオペレーターも多く活躍している。先に入社した先輩が「ここは良い会社だ」と後輩を引き込むという良いフローが生まれている。
「当社の元気の秘訣は、海外に出て行っていることと、先端の仕事に積極的に取り組んでいること。そうすればいくらでも仕事は取れると私は信じています」と黒田氏は述べる。
金型の業界構造自体も改革が必要であり、発注側が受注側にコストダウンや納期など厳しく問うだけではなく、受注側をパートナーとして尊重した待遇をしていくことも重要だ。黒田精工は業界の先端で技術を研鑽し、大きな成果を出し、世界のクルマメーカーに高く評価されている。変革の兆しは見えつつあるのではないか。