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日本がCASE時代を勝ち抜くためのオンリーワン技術「V-LINE®」

日本がCASE時代を勝ち抜くためのオンリーワン技術「V-LINE®」

株式会社ソディック
上席執行役員/事業部長 谷口 一芳 氏  

掲載企業株式会社ソディック

主要3品目
  • NC形彫り放電加工機
  • NCワイヤ放電加工機
  • ハイスピードミーリングセンタ
従業員数
3,746人(連結)1,087人(個別)
年間売上高
年商 804億円(連結)

放電加工機屋が作った射出成形機

 1976年、30代の若き技術者であった古川利彦氏が横浜市で創業した国産加工機メーカーのソディック。そして放電加工機から始まった同社が射出成形機に参入したのは1989年。射出成形機市場としては後発だった。同社の放電加工機で金型製作を行う顧客から、精密部品の射出成形時に頻発する成形不良について相談されたことが事業発足のきっかけであったと言う。

 ソディック上席執行役員で射出成形機事業部の事業部長を務める谷口一芳氏は、「当時、射出成形機の開発担当に(創業者である)古川が伝えていたのが、『他社にはない成形不良が出ない射出成形機を作ろう』ということでした。古川のこの一言が、今日のソディックの射出成形機における存在感を作り上げています」と語る。

ソディックのオンリーワン技術「V-LINE®」

 ソディックが射出成形機に取り組みだした当時から今も、「インラインスクリュー方式」(インライン)が主流だ。この方式では、1本のスクリューとシリンダーが同軸上にあり、樹脂の溶解(可塑化)から射出までを行う。1989年当時に顧客が悩んでいた成形不良も、この方式が起因するものだった。1本のシリンダーの中で樹脂を「溶かす・計量する・射出する」という工程を完結させるため、計量された樹脂量や粘度が安定しなかったのだ。同社は、そうしたインラインスクリュー方式の欠点に着目し、樹脂の溶解と射出を2本のシリンダーで役割分担させるように開発を進めた。「2本のシリンダーを使用する方式は、インライン以前にあった技術で計量値が安定するという長所はあるが、材料替え(色替え)の問題や異物混入の可能性が高く、過去の技術とされていました」と谷口氏は言う。

 そこで、同社の技術陣が再度この長所を生かすと共に、短所とされていた樹脂替えや異物混入の対策を行うことで生み出されたのがソディックの独自技術「V-LINE®」方式だ。V-LINE®であれば、最適な樹脂計量を行った後に、必要な分だけ射出部に樹脂を送り込むことが可能になる。

 V-LINE®構造は、成形の安定性が高いので、インサート成形やフープ成形として生産ラインの一部として設置されることが多い竪型成形機(金型が上下に動作する成形機)において特に評価が高く、非常に高い歩留まり率を保つことにより、生産性の向上に大きな貢献をしている。

 V-LINE®には現在、用途に応じたさまざまなシリーズを展開し、高付加価値製品用として高応答モデル「LP series」および高速・高圧モデル「HSP series」などを備える。また同社のベーシックモデル「GL series」の後継でもある電動モデル「MS G2 series」の引き合いも増えているとのことだ。

時代が変われば、技術も変わる

 かつての射出成形現場では、成形職人の経験と勘により成形条件を都度、微調整することこそが技能とされた。放電加工機でNC技術を熟知しているソディックでは、成形を技能という概念ではなく、あくまでも技術で語る必要があると考えている。

 「ソディックの射出成形機では成形条件をその理論で簡単に出せるとの理由で、以前、成形技能検定の対象機種から外されてしまったことがあります」と谷口氏は苦笑する。同氏は検定運営元に抗議し丁寧な説明を行うことにより、対象除外の件を取り消してもらったと言う。「経験と勘ベースの成形は人の技能に起因する要因が大きく、成形品を技術論に基づいて作り上げるという技術伝承の面でネックとなり得ます。付加加価の高い成形部品を作るためにはCAE(解析、シミュレーション)などを用いて設計検証を行い、その理論に基づく高度な成形技術論にて進めて行く必要があります。さらに自動化により、より創造性ある業務に労力を割ける環境を作るべきだと思います」と同氏はソディックの考える成形業務のあり方について語る。

 同社の射出成形機では、IoT化に意欲的に取り組み、品質&生産管理システム「V Connect」などを開発し、リモート稼働監視や予防保全などの機能も実装している。

 今後、ソディックの射出成形機事業で注力するのは、ICT全般や、自動車業界における「CASE」(※)分野の精密部品や医療関係。ソディックのV-LINE®で、緻密な部品加工が得意な日本の技術者とデジタルの力が掛け合わされば、日本製造業の圧倒的勝利も約束されよう。

(※) CASE:Connected (コネクティッド)、Autonomous / Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字であり、自動車分野の次世代技術革新の概念を示す。

掲載会社情報

株式会社ソディック

株式会社ソディック

所在地
〒224-0041 神奈川県横浜市都筑区仲町台3-12-1
TEL
045-942-3111
FAX
045-943-5835

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