
業界特集

株式会社三協製作所
掲載企業株式会社三協製作所
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主要3品目
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繊維強化プラスチックス(アラミド繊維・炭素繊維・ガラス繊維)
ハニカムサンドイッチパネル構造体及び構造部品
エンジニアリングプラスチック成形・加工
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従業員数
50名
CFRP業界をけん引するパイオニア企業
CFRP(炭素繊維強化プラスチック)が市場に登場した当初から取り組み、35年という長きに渡って業界の最前線に立ち続ける会社がある。株式会社三協製作所だ。導入当初は大手電気メーカーと協力して加工をメインに行っていたが、現在では設計から成形、機械加工、組立まで一気通貫体制で行っている。宇宙航空用途で用いられることが多かったこの先端材料は、今や自動車のみならず、産業機械や医療機器。さらにはゴルフのシャフトや釣り竿など、レジャー用品にまで広く使用されるようになった。同社が得意とするのは自動車などで選択される高強度のPAN系ではなく、高剛性で熱膨張性の低いピッチ系材料。一口にCFRPと言えど、その特性や用途は異なり、使い分けがされているのだ。
同社の顧客は宇宙防衛関係、産業機械、医療機械と幅広く、長く付き合いのある顧客もいれば、近年では勢いのあるベンチャーやスタートアップ企業も増えてきたという。同社ではプリプレグと呼ばれる繊維強化材に樹脂を含浸させたシートを材料メーカーから仕入れ、積層することで用途に合った特性を作り出す。重ねる方向や枚数など、積層方法が何通りもあり、いかに積層するかがノウハウなのだ。繊維のため異方性があり、重ね方によってどのようにも設計することができる。これは一方で弱点でもあるが、機械加工や金属との複合などを組み合わせることで顧客の要求仕様に応じた製品を作り上げていく技術力は同社の強みだ。CFRPという素材は炭素繊維と樹脂の複合材だが、含侵する樹脂の機能向上は進んでいるものの、近年では素材として大きな進展はそれほど見られないと言う。工法もある程度確立されている。そうした状況の中で、高精度や高強度など、高まる顧客要望に応えるのは、同社の蓄積されたノウハウと技術力があってこそ。「顧客とのコミュニケーションを大事にしています。少量多品種生産なので、手間はかかりますがおもしろいですね」と工場長の佐藤純氏は朗らかだ。

耐熱性強化で用途拡大を見込む
材料メーカーからの信頼も厚い同社は、新素材の研究開発にも積極的に協力している。現在のトレンドは耐熱性の強化だ。CFRPは樹脂を使用するため、耐熱性には限界がある。だが、現在は200℃~1000℃という超高温環境で使用できるCFRPの開発が進められている。高温環境が求められ、多種多様な用途でもCFRPは選ばれている。CFRPは熱膨張性に優れているため、金属と異なり高温化でも伸びたり変形したりしない。その上振動減衰性が高い。例えば高温の窯などにロボットアームを伸ばしても変形せず、長いアームでもたわまず、さらに高速で動かしてもすぐに振動が収まるというわけだ。もちろん鉄に比べて重量は1/5、剛性は約2倍と言うから、その素材の優位性は際立つ。20年ほど前、日本で液晶パネルの製造が盛んになったころからロボットアームにCFRPは使用されてきたが、今後もさらにさまざまな用途での市場拡大、用途拡大が見込めるだろう。
新たな分野にも可能性を拡げていくCFRP
「使用用途に適合していれば、大きければ大きいほど長ければ長いほどCFRPは金属には負けない。特性を発揮できれば必ず最後にはCFRPにたどり着く」と佐藤氏が言うように、防衛関係などではどんどん構造物が大きくなる方向に進んでいる。同社が力を入れているオートクレーブ成形では7mまでの長さの成形が可能だ。一方で、小さく高精度な製品にもCFRPの需要は伸びているという。新たな産業としては、近年医療関係も順調に伸びている。CFRPはX線透過率に優れているため、軽量化が要求されるポータブルレントゲン装置など、人が持ち運ぶ新しい医療の形を作り出しているのだ。

CFRPは金属とも既存のプラスチックとも特性が異なるからこそ、使い分けることで新しい可能性を生み出していく。しかしそれを使いこなすためには、積み上げられたノウハウと確かな実績が鍵となっているのだ。