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熟練技能を、すべての作業者へ──100年目を迎えた黒田精工の研削盤革命 

熟練技能を、すべての作業者へ──100年目を迎えた黒田精工の研削盤革命 

黒田精工株式会社(神奈川県川崎市)

掲載企業黒田精工株式会社

主要3品目
  • ボールねじ

  • 工作機械

  • 精密金型

ゲージから研削盤へ、100年受け継がれるDNA 

 1925年に黒田挟範製作所として創業した黒田精工株式会社は、2025年1月に創業100周年を迎えた。同社が初めての研削盤を世に送り出したのは1953年のことで、モーターコアの高精度な金型を製作するために、自社で研削盤の設計から手がけたのが原点だ。そこから半世紀以上にわたり進化と実績を積み重ね、現在では国内有数の平面研削盤メーカーとして認知されている。ゲージ製造から始まり100年間、黒田精工のDNAには「究極の精度」が刻み込まれている。 

 黒田精工の研削盤が追求するのは「操作性」「環境性」「拡張性」の3つだ。精度・信頼性はもとより、人間工学に基づいたボタン配置やハンドル設計により、作業者の負担を軽減する操作姿勢を実現している。そして「作業者目線」の設計はハード面だけにとどまらない。最新機種の操作画面はタッチパネル化されており、直感的なヒューマンマシンインターフェースを備え、日本語だけでなく英語、中国語、ベトナム語での操作にも対応している。 

 環境面への配慮も欠かさない。従来、油圧を用いていた箇所を最新機種では電動化し、省メンテナンス・省スペースを実現した。さらに消費電力を従来比の約1/3にまで削減。また、熱源となる油圧システムを廃したことで、加工中のテーブル及びワークへの熱伝達が減少し、精度の向上にも寄与している。また、切削液中に微細な泡「ウルトラファインバブル」を発生させることで、砥石寿命を延ばすオプション機能も提供している。 

スキルレス化が拓く研削加工の未来 

 人手不足が深刻化する製造業において、属人的な作業の削減は急務だ。黒田精工はこの課題に対し、スマート化オプション機能という「拡張性」の解を提示する。その代表格が「SmartContact」と「SmartDress」だ。 

 「SmartContact」は砥石とワークの自動接触検知により、従来は熟練作業者が目視と手作業で行っていたアタリ出し作業を誰でも簡単にできるようにした。研削工程はワークの製作において最終段階で行われることが多いため、アタリ出しの失敗リスクを減らすことは歩留まりの改善に大きなメリットがある。また、アタリ出しに必要となる時間(工数)を削減する効果も期待できる。 

 「SmartDress」は、砥石表面をダイヤモンドで整えるドレス作業を自動で行うシステムだ。搭載されたセンサーが砥石の加工負荷をモニタリングし、熟練技術者と同様に最適なドレスタイミングを検知して自動でドレスを行う。これにより「手離れ時間」が長くなり、人件費削減にも大きな効果をもたらす。この2つの技術は、2022年に精密工学会第6回ものづくり賞で優秀賞を受賞している。 

 100%の完全な自動化で『付加価値を生むだけの加工精度』を実現することは難しいが、10のうち8を自動にすることは十分可能という。同社では他にも、ワークを取り外さずに機上で測定できる機上計測システムなども提供し、作業の効率化や属人化の解消に貢献している。同社の担当営業責任者は「スキルレス化のお手伝いができるような製品を今後も開発していきお客様のニーズに応えていきます」と語る。 

100年目のマスターピース ロータリー研削盤「GSR-600」 

 2024年11月のJIMTOFで発表された「GSR-600」は、黒田精工の歴史で初となるロータリー研削盤だ。同社の“最高傑作”ともいえる革新的な一台の登場に、「いままでの黒田とは違う」と驚きの声が上がった。半導体業界を主なターゲットに開発され、ファインセラミックスや難削材金属の加工に対応している。受注状況も好調で、まもなく出荷が始まる予定だ。 

 「GSR-600」の最大の特徴は、一段階上の圧倒的な精度だ。φ500mmの円盤において平面度1.5μmという超高精度を実現した。同機には、高精度の主軸や振動減衰機構など、同社100年間の技術の粋が詰め込まれている。さらに扉の配置やハンドルの位置、テーブルの高さにも工夫を凝らし、作業者の負担を軽減。「作業者目線」の設計が随所に活かされている。 

 「さらに大きなワークに対応してほしい」という顧客の声に応え、今後は大型サイズのロータリー研削盤もラインナップに加えることも検討していく。 

 富津工場内のショールームでは、実機に触れ「作業者目線」で黒田精工のDNAを体感できる。「操作性」「環境性」「拡張性」というキーワードをベースとした独自の強みを武器に、業界をリードし続ける黒田精工の101年目の進化にも注目が集まる。 

製品情報

  • 精密平⾯研削盤

  • 精密平面研削盤/GS-PFシリーズ

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