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板金DX加速の一手、とんがった板金複合機の能力さらに引き出す

板金DX加速の一手、とんがった板金複合機の能力さらに引き出す

村田機械株式会社
取締役副社長 工作機械事業部長 村田 洋介 氏

掲載企業村田機械株式会社

主要3品目
  • タレットパンチプレス

  • ファイバーレーザ複合加工機

  • プレスブレーキ

従業員数

8502人( グ ル ー プ )/ 4027人(単独)(2023 年 4 月現在)

年間売上高
4661億円(連結)/ 3653 億円(単独)(2023 年 3 月期)

 村田機械株式会社は、「繊維機械」「ロジスティクス&オートメーション」「クリーンFA」「工作機械」「情報機器」の5事業を展開する産業機械およびOA機器メーカーだ。1935年創業の繊維機械メーカーであった「合名会社西陣ジャカード機製作所」から始まり、数々の「世界初」「日本初」「業界初」に果敢に挑戦しながら事業を多角的に成長させてきた。

 今日の製造業においては、特に生産ラインの搬送機械、自動化/省力化技術に強いことでも知られてきた同社であるが、長きにわたる産業機械づくりの中で培ってきた板金加工機械開発にも要注目だ。板金加工機械やサービスにおいても、「機械にできることは機械に任せて、人間は人間らしい創造的な仕事をしましょう」という同社の思いが生かされている。

半導体需要拡大と生産能力の増強

 2025年に創業90周年を迎える村田機械は、2023年4月現在、社員数はグループ全体で8502人。京都市に本社を置く村田機械の拠点数はグループ企業を含めて国内29カ所、海外34カ所以上にのぼる。2023年3月期時点での売上高はグループ連結で4661億円。売り上げ構成比は、日本が30%およびアジアが45%とアジア圏が多くを占め、欧米については米が15%、欧が7%となっている。

 近年は、半導体需要の急上昇を受け、OHT(天井走行台車)を中心とした当社の半導体製造工場向け搬送システムの生産が拡大しているという。それを受け、主要拠点の伊勢事業所ではこの数年で2つの生産棟を増築し、基板や制御盤など電装品の製造を行う竜王工場(ムラテックメカトロニクス(株)滋賀事業所)でも生産棟の建て替えが進んでいる。

「とんがった職人気質」の村田機械の板金チームが生み出すもの

 村田機械では、タレットパンチプレスやレーザーパンチプレスといったプレス機と、ファイバーレーザー加工機およびその複合機、プレスブレーキ、研磨機器などの製品を展開する。パンチプレスやレーザー加工機用の搬送装置も開発している。併せて、ハードウェアからソフトウェアまで自社開発であることも特色だ。

 村田機械が創る板金加工機は、犬山事業所や加賀工場、ムラテックメカトロニクスなどグループ内自社工場でも活躍している。社内の、すぐそばで装置や部品生産にかかわる技術者ユーザーに試してもらって、その声を直接聞きながら、日夜、開発と改良が続けられていることが、同社の板金加工機械開発の特色でもある。

 板金機械関連の事業は同社における比率は決して大きくはない。これまで「なるべく広く、多くの顧客に届ける」というより、「自分たちの技術で貢献できる顧客と密につながり、そこで全力を尽くす」スタイルを貫いてきたという。開発においては、過去から積み上げている数多くのカスタマイズ経験を活かし、時に少々冒険とも思えるチャレンジまで行う。まさしく、「とんがった職人気質」ともいえる開発風土だ。

 現在、板金加工、中でもレーザー加工機関連の開発トレンドとしては、環境配慮などの観点からCO2レーザーを手掛けていたところがファイバーに移行する動きが見られる。「当社はもともとCO2のレーザー専用機の取り組みがなく、ファイバーレーザーから参入していた。それが今日、性能的なアドバンテージを生んでいる一面がある」と村田機械 副社長村田洋介氏は述べる。1984年には国産初となったレーザー複合機「W4560」を上市している。

 同社技術の醍醐味が詰まるファイバーレーザ主体の複合加工機「LS3015HL」および「LS2512HL」、フライングオプティクス方式(レーザー光を常に材料に対して垂直に照射する方式)で、剣山パレット上で、高速かつ高精度なレーザー加工を行える。さらにレーザー切断後はブラシテーブル上に自動で送られ、そこでプレス成形、そしてタッピングまでこなす。「(おそらく)世界でほかにはない、面白い複合機だ」と村田氏は胸を張る。

板金加工の世界がオープンになっていた

 「製造業の現場では機密保持やセキュリティーの観点などから、工場の中のデータをつなげて見える化することに消極的になってしまうということはよくある。しかし板金加工の現場は、それが他分野の加工現場と比較すれば進んでいるという実感だ」と、板金現場でのDXやIoTの活用状況について村田氏は話す。

 村田機械では現在、板金加工データのオープンインタフェースである「SCPX」を提供している。1つのデータ内に各工程で必要な情報が表現可能なフォーマットで、板金工程で必要な各情報に簡単にアクセスできる。工程間やさまざまなメーカーが提供する装置を連携させ自動化させる際には、データフォーマットや規格の違いなどがハードルとなってきたが、そこをクリアするための1つの有効手段となる。

 「もちろんお客さまは、村田機械の装置のみを使って生産しているわけではありません。今後、当社としてはこのような取り組みを加速していかなければ、お客さまの生産性向上や品質向上などのための自動化/省人化やDXをきちんと支援できません。そうした考え方に共感していただいている企業さんも増えています」(村田氏)。

 2023年には、こうした考え方で村田機械と三菱電機が共同で「THE OPENWORLD」の推進をスタート。メーカーの枠を越えて、常に連携しあえる環境に向けて、まずは村田機械のSCPXと三菱電機が提供するDXプラットフォームである「MONOZUKURI DX Solution」を提唱し、連携企業も紹介した。連携企業には、工作機械メーカーや金属加工メーカーの他、3D CADベンダーなどものづくりIT企業が名を連ねる。この取り組みにより、板金加工業における、安定加工や競争力強化、人手不足解消などを目指していく。連携企業の数はさらに増やしていく計画であり、今後の動きの加速に期待がかかる。

製品情報

  • LS3015HL

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