業界特集
日進工具株式会社
代表取締役社長 後藤 弘治氏
掲載企業日進工具株式会社
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従業員数
350 人
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年間売上高
- 90 億円
工具の長寿命化で金型コストを削減
切削加工業界全体の課題は、コスト増による利益の低減、そして人手不足だ。コロナ禍を乗り越えて売り上げは持ち直していても、現在の電気代や人件費、金属などの材料費の高騰によって、利益を取り戻せていない企業は多い。そうした製造業界全体の課題に対し、日進工具株式会社が行う提案が、工具の長寿命化だ。工具が長持ちすれば、消耗品である工具のコストが抑えられるだけでなく、工具を交換する手間や時間の削減にもつながる。自動化が進んでいる製造現場において、段取りやセッティング時間の短縮は必須である。また同社が得意とする微細加工の分野では、工具を変えるだけで工具先端の位置がずれてしまい、切削面に段差が生じてしまう。磨き工程で段差の対応をしなくてはならないが、技術が必要なため人手不足が課題となっている今、大きなネックとなっている。つまり工具の長寿命化は単純にコスト面だけでなく、機械の稼働時間向上による効率改善、さらには人手不足対策につながっているのだ。
難削材の切削にも対応
プラスチック用射出成形金型は、ショット数の増加や鏡面仕上げなど高付加価値化が進む傾向にある。切削の難易度が高い高硬度材の需要が増えているが、こうした難削材の加工は工具泣かせだ。そこで同社は熱処理後の SUS420 系ステンレス鋼(52HRC)相当品直彫りに対し、従来比で工具寿命を 2 倍に向上させたロングネックボールエンドミル「XRBH230」を開発。これは JIMTOF2024 に合わせ、11 月 5 日から発売を開始する。「XRBH230」は、同社が 2 年かけて開発した特殊コーティング「MPX コーティング」と、最適化した刃形状によって長寿命化を実現。金型コスト削減に寄与する。
メイドインジャパンの現場力
日進工具株式会社は、自社開発の工具研磨機を導入し 24 時間完全自動生産を実施している。小径分野のエンドミルに特化しており、同社の極小径工具を使用し立型 5 軸マシニングセンタの性能を最大限に引き出して作られた世界最小金属製ルービックキューブは 1 辺の大きさが 0.5cm。JIMTOF2024 でも展示予定だ。こうした現場力、開発力に大きく貢献しているのが社内教育システムの「石川塾」だ。OJT や先輩からの指導だけでは、伝達に誤解や齟齬が発生してしまう可能性がある。そこで教育内容を標準化し、技術者としてしっかり教育を行ってから新人を現場に立たせるようにしたのだ。これによって新人の定着率が向上し、現在では若い人や女性が現場で活躍している。この成功体験を受け、現場だけでなく営業でも同様の施策を行っているという。営業は顧客から直接情報を集める重要な役割を果たす。同社では顧客と機械メーカーが直接会話をする機会を設けるなど、これからも市場ニーズをくみ取った開発を行っていきたい考えだ。展示会にも力を入れている。「コロナ後今回の JIMTOF は 6 年ぶりの活況が見られると期待しています。同社では海外からの顧客も多く来日する予定となっています。品質の高い日本製工具に自信を持っている。ぜひ多くの方に日本の技術を見てもらい、はずみをつけたい」と代表取締役社長の後藤弘治氏はJIMTOF2024 に期待を寄せる。