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プレス金型か電池か、市場ニーズの変化に合わせて国内外で売り上げを伸ばせ

プレス金型か電池か、市場ニーズの変化に合わせて国内外で売り上げを伸ばせ

株式会社野上技研(茨城県常陸大宮市)

掲載企業株式会社野上技研

主要3品目
  • 超精密治工具設計製作

  • 精密プレス金型設計製作及び精密プレス加工

  • 精密機械部品・精密金型部品製造

従業員数

62人

年間売上高
8 億円

 株式会社野上技研は1970年の創業以来、超精密研削加工技術を追求している。世界トップクラスの10,000分の5ミリ ― コピー用紙の厚み200分の1程度の平行・直角精度を誇る。このような圧倒的な技術力を持ち合わせていた一方で、同社代表取締役の野上良太氏が入社した1989年当時、1社依存度は90%以上に達しており、経営上のリスクを感じていた。そこで、「設計で、ものをゼロから生み出す機能を社内に作り、ユニット品を作りたい」と注目したのが金型だった。それまで培ってきた刃物の技術を生かせるという点から、プレスの順送金型の設計製作を開始。数百万個の量産に対応可能な体制を整備した。これが1992年頃のことだ。事業が拡大するにつれ、アジア圏を中心とした海外でプレス部品を供給してほしいという要望が増えてきたという。

 やがて、プレス部品加工の売上拡大に物理的な限界を感じ、技術・製品の輸出へ。さらに電池業界に絞ってソリューション提供をする形式へと変化していった。現在では25カ国以上に製品を輸出している実績があり、中でもヒット商品であるハンドパンチは1万台以上が売れている。その他、電池を開発する上で必須となる各種精密加工ツールを世界の電池開発者へ提供している。

代表取締役 野上 良太 氏

 同社年商は1990年代に3億円程度だったが、現在は8億円にまで成長。売り上げ比率は、電池50%、刃物40%、プレス10%。時代と市場ニーズの変化とともに、同社のプレス関係の業務は海外に移管されて売り上げ自体は減少したが、その分を電池ソリューションの売り上げで補填している。

 野上氏の経営手法では、マーケティング戦略の手法としてSTP(S:セグメンテーション、T:ターゲティング、P:ポジショニング)分析を重要視している。ターゲットを絞るため自社Webページでも電池の開発者や企業内で研究開発している担当者に向けて「電池材料開発支援事業」という単語を全面に出して、あえて間口を狭めるように見せているのだという。ターゲットを絞ることはビジネスチャンスを排除する可能性もゼロではないが、世界中からピンポイントで寄せられる難しい課題をこなし続けることで解決事例が蓄積されるうちに、顧客の悩みをパターン化し、それに合致したものを標準化および商品化し即納も可能な体制になっていった。野上氏や経験豊富なスタッフと同等の知識を持つ人材を育成するにはコストがかかるため、標準化は理にかなった方策だ。

 同社ではブランディングのみならずマーケティングも重要視している。例えば、次世代電池の加工が量産対応になるケースだ。自動車メーカーでは基本的に自社内で量産プロセスが確立されているが、もし加工が難しいという相談があれば量産金型は野上技研から提供する、というスタンスで進めている。市場や時代のニーズに合わせて需要と供給を見極め、常に先を行く経営手法だ。精密な打ち抜き技術や平行・直角精度を生かした同社のコア技術が支えとなっている。ただ技術を見せるだけではなく、野上氏は「『誰に、どんな価値を提供できるか』を言い切ることが大事です」と強調した。

金型製作の例
電極抜きハンドパンチ

製品情報

  • 電極板製造の品質管理に!塗布量測定時にバリなく電極を打ち抜くハンドパンチ

  • 厚さ0.005ミリの薄膜フィルムや金属箔を変形無く打抜く超精密ハンドパンチ

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